すきま風

わたしの前から
あなたが立ち去った

その瞬間、
わずかな風が生じる

わずか、だ
わたし自身が感じるか感じないかくらいの
本当に微かな風
しかしその何とも言えない悲壮感
わたしは今 とても可哀想な人間だ

ちょうどその日は
草も揺るがず
空は清々しく澄み渡る
春の心地良い陽気だった

一方、その頃
地球の裏側では
蝶が青草から

 ふわり

と飛び立つ

その瞬間、
わずかな風が生じる

そのわずかな風が
はるか海の向こうの気象を左右し
数時間後には蝶も行けない大地に
大嵐を齎すこととなる

本当に微かな風
あなたが立ち去った後
取り残されたわたしの心の中の
ぽっかりと開いた部分に
強い隙間風が吹きぬけた


自由詩 すきま風 Copyright  2005-04-24 19:22:07
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