缶コーヒー
佐白光


 朝から電話が鳴りやまない

 短時間で切るには

 黙って聞き手に徹するしかない

 ハイ ハイ 以外言葉を忘れそうになる

 自分と違う意見を耳にするのが

 これほど忍耐が必要なことに

 いまさらのように感心するしかない

 10時まだ鳴りやまない怪物を置き去りに席をたつ

 自動販売機の前で一息

 迷わずブラック缶コーヒーのボタンをプッシュ

 逃げ出すわけじゃない

 十人十色を再認識して回れ右

 缶コーヒーは飲み干している

 

 

 


自由詩 缶コーヒー Copyright 佐白光 2021-06-13 14:01:15
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