ぺんぎんの物語
ベンジャミン

ある日突然 僕は空から落とされた

かたちだけの翼は風を抱くこともなく
ぎこちなく歩く姿に影で笑うものもいる

そしてある日 僕は海に身を投げた

全ての終わりを予感して
全てをまかせて楽になりたかった

潮の流れに運ばれながら
かたちだけの翼が水を抱いていた

閉じていた目をあけると
そこにはもう一つの空があった

「僕は誰よりも上手に泳げる
 ここは僕の生きる場所なんだ」

何が変わったわけでもない
世界はただあたりまえにあるだけ
だけど今の僕は何だろう
今の僕は確かに違う

全ての終わりが始まりになった

水面に顔を出して空を見上げた
僕は鳥でもなく魚でもない
空と海の境界線を生きる

僕はぺんぎんなんだ

勢い良くジャンプして 一瞬だけ風を抱いた翼は
キレイな水しぶきを 高く高くはねあげていた

もう恐くはない恥ずかしくもない
あの日僕を責めていたもの

きっとそれは
臆病な自分自身だったんだ

   


自由詩 ぺんぎんの物語 Copyright ベンジャミン 2005-04-24 00:08:44
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