575
なけま、たへるよんう゛くを

・575
補助輪を 山ほど付けて共倒れ
奢りだの 親分子分 はした金
座布団か拍手でお迎えくださいませ
獄門の 上にもぬけのカタツムリ
陶酔で水捌けよくして泣きじゃくる

ウイスキーと 訳知り顔な銀時計
旧坑を笑いさざめく 化石採り
蛹捕り 蛹捕り埋む 療養所
続くとは 西暦をぺらりめくること
鍋物を持ってる時ほど出るくさめ


・7775(お題:草)
シロツメクサの白波じゃれて 跳ねているのか白拍子
コロポックルはヤモリを駆って 軍隊アリを退けに
深夜放送 何言か漏れ 瓦屋覆う草も草
ぬるんだ麦茶 いぐさの編み目 柱にもたれ 夏尽くし
高架下土手 回は九つ 白球舞ってストライク


・57577
飾り切り 透かし鬼灯 氷細工 オークショニアの舌先三寸
探り当て血で血を洗い 宝箱に 何もなかった秋の夕暮れ
災害か事故が残ったご時世に 町を襲って死ぬ熊のやつ
とち狂う おさなごの声 指差した悪魔を射って 悪魔を射って
Tシャツを腕まくりする居丈高 葡萄を踏んだ象の正夢

はだかんぼな男の人は 内臓がはみ出していたり かっちょ悪いよ
清純派カクテル喫茶 禁煙は店外へ出て好きになされたし
蛇行する 尾根に夜汽車を走らせて 船場で倦んだことは忘れな
ハーメルン お望み通り ハーメルン 笛も吹き吹きお供連れ連れ
滑降の戦闘機首を司り 我雪辱の暁に死す

遠い人 炙るライター3時半 泣き止む間にも潮風からい
リモコンを寝ぼけて押した主より 一足先に起きるエアコン
風呂上がり ぼさぼさ髪をメンテナンス 櫛は折れてく欠け落ちていく
子どもたち 君守る服を顧みよ こんなほつれて痛かろうにね
天性の催眠術師が嫌になり 誰の目からも消えてしまった

仕切られて歌う家畜も数おれば 小夜の夢見は溶けてよからん
その意気で好物ばかり食べなさい 背骨飛び出し竜になるだろ
無愛想で無宿無飯で無理解で無菌の神よ そのままでいて
あの子ただ 青い舌出す影は縞 ちょろちょろ走る銀のともがら
厭わしい火照りは引いて 昔から琥珀を深く眠りたかった

いかんなき花の密度に恋をする 塗りたて道の熱さを跨ぐ
吹き抜ける銀に酔うてか 畏まり 無様残月睨むアザラシ
これなるは滅びた枝の従姉妹たち 未来像技師 胸が丸焼け
お待ちどお 例年通り異常気象 今際に話しかけたい横に
わからないこともないけどわからないこともないけどいやわからない

やくざ医師 紙屑篩う24時 海抜零下のマンボ娑婆娑婆
ラ・フランス レースのクロス たんぽぽ茶 あっためすぎた夢の燻製
蛆虫と 美談仕立ての見世物と 蛆虫園とちちこ蛆虫
スルメイカ 折り畳み椅子 サングラス そうらリールを巻いたリールを
ビタミン剤 中元型録 私事 午睡覚むるや淡し黄昏

お気遣いも ミルクなくては飲み干せぬ ロマンチストの切れた唇
うんざりだ 草臥れた靴 蜃気楼 馬車馬の骨 馬車馬の骨
片時も 祈り育むシャンゼリゼー 行間の町 あばら家は不寝
すねこすり ゆくゆく向こうに褪せる川 風に梳かれた麦は棚引く
いい夢もよくない夢も目を焼いた みんなみいんなメリーゴーラウン


・57577(お題:本)
符の束を朗らかに読める鍵盤は いつやどこかの人の歌声
休み前 背伸びし借りた10冊も いずれ等しく日めくりの餌
お引っ越しさせてやれずにすまないが 赤青黄色の雑誌さよなら
思い出と笑って泣けるバカ話 作れたやつらのためのアルバム
暗くしてスローペースで囁いて 絵本が枕にならない子ども

村人よ たった一度の出番だから 台本通りじっとしてくれ
休みなくきらきら光る景勝地 十年選手の寄せ書きノート
文字は揺れ行は飛んでも怖くない 本はあなたに開かれている


自由詩 575 Copyright なけま、たへるよんう゛くを 2021-03-13 02:26:34
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