空気管デッサン
あらい

口笛を吹きながら でも いくつ 数えたやら。
ただ、らくにいきたい

足元の泥を掻き、道標を示して、僕と飼い犬は何処までも反転する。
星と海が緩やかに準える視野ばかりが満天に開けている。
麗らかなネモフィラのうたにたしなめられて、不意に我に返るが、
浮遊した躰は宙にのたうつだけ、違和感だけが肥大する、
自分の姿すらうつす値打ちもない、厳粛な朔は虫の音すら殺し
私はわたしのままであったかどうか、探すこともやめてしまう

限りなく間延びしたブルーグラスは素肌のまま、その魅をひらつかせた。
ラピスラズリの瞳、甘えたがりの黒豹の毛色を撫でつつ、
ときに引きはがされていくのです。

また埃を被り燃えカスみたいなカレンダーには砂糖菓子の香りが広がり
バツ印ばかりが黒く宛がわれてしまう、白蟻の烈が肢体と重なり
過ぎ去った日々を指折り教えていた。
ねえ、いつになれば私を迎えに来るの、攫ってくれるの、
白い部屋に配置された私と彼とモノクロームエフェクト
濡れ羽色のときを見せる 砕けた硝子の器に湛える、
視界を覆うカーテンが漣に酔い潰れる
漆黒に焼き付いてしまって洗いざらい吐き出してみても
透明なままの封書に懺悔して、見えざるものは残響を封じたままだ

幾重 くるわれた、ここは メリーゴーラウンド
行方を見失って不協和音を曳きづって没する

かれらの足はもう揺らぐことがなく、繋がれたものも涙することもない、
そこに指名されているのは、姿かたちを模した、きれいな陶器人形たち、
かじかんだcup、立ち昇る煙だけが、
とぎれとぎれのときを、生きたものとしていた

壊れた再生装置から検出された愛は、胸に縫い付けられた、
アンティークをうたう新緑の空気管だけを
取り残したこの今を想えば。空回りする風の音が、
眦の隙間から零れていた
これを束ねて明日とする。
だれが値をつけるのか、
我楽多の中の思い出に溢れる、ありふれた木漏れ日を
だれが買い求めるというのか。
まどろみにも満たない 私たちの生きざまをうつすスクリーン

わたしは あなたに見合うモノか。値をつけるものはいないはずだった


自由詩 空気管デッサン Copyright あらい 2021-02-28 14:17:52
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