ありふれた愛の歌
ベンジャミン

伝わらない色々を
伝えようとする色々でかきまぜれば
伝えたくてしかたがない


口にすれば単純な言葉ほど
意味は遥かに広く遠く薄れて消えそうに思えて
やはり口にできない

人を吐きつくした駅で
あなたの後姿が階段に押し上げられてゆくとき
忘れそうな今日をつなぎとめようと


呟くように




  僕が隠し続けた君への想い
  ありふれた言葉ならべて
  にぎりつぶした手紙
  
  愛したいよその言葉より
  愛したいよその意味より深く



ほんとうにありふれているのは
自分に都合の良い言い訳で
だって好きだからとか
だけど好きだからとか

だって?
だけど?

いったい何に言い訳をしてるのか

僕らは言葉を持って生まれ
僕らは言葉を知ることで意味を知り
そうやって深まってゆくものなのでしょ?

とてもきれいな花を見ました
けして同じではない感じ方なのに
同じ「きれい」という言葉でわかりあえるのでしょ?

とてもあなたを好きなのです
その言葉以上に伝えたいときも
僕らはやはり言葉に思いを託すのでしょ?

(好きです)

ありふれている

(好きです)

伝わっているのか

(好きです)

そのままの意味だけど

(それでも)

相手が見せてくれるその笑顔は

(けして)

ありふれてなどいないのでしょ?

   


自由詩 ありふれた愛の歌 Copyright ベンジャミン 2005-04-21 04:33:49
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