装うあなたの
霜天

春を装ってあなたの溶けていく先は自由落下する崖のような場所
僕らはそこへ向けて、手を振る
気の済むまで落ちてから
何事も無かったかのように泳ぎ出すあなたを
僕らはただ、手を振るだけ


いつの間にかの間違いを
部屋の隅から並べてみると
入りきらなかった
あなたの脱ぎ捨てた冬の衣装が
ここまで漂ってきていて
酷く寒い

気付いてみれば
暖める手段を忘れてしまっている
あなたは春に装って
南風の入り口で漂ってばかりで
降りてこない
忘れそうなことを
忘れることも出来なくて
酷く、寒い


あなたはその先で
僕らの靴の先を少しだけ、踏んでいるようで
あなたは春を、装いで
つまらないことを踏み越えるステップで
駆け抜けるように、落ちていく

自由落下
真似することも届かないくらいの
春を装って


自由詩 装うあなたの Copyright 霜天 2005-04-21 01:31:25
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