煙とともに
由比良 倖

この世はとても淡いけれど、
宝石みたいに見える場所があって、
ふいに街は夕日に溺れていく。

潰えていく、潰えていく、僕の命。
潰えていくだけが命。

僕が綺麗に消えたなら、
君は僕から何を受け取ってくれる?
静かな幸せと、静かな思い出を、君にあげられたらいいな。

僕は箱の中にいて、
サクランボとゼリーとサイダーに包まれている。
この一回きりの夜を透明で満たそうとしている。

胸の中。澄み切るように細い線。
鈍い震え。いつかその線が、
君の命と交差して欲しい。
ときに嘘を繰り返しながら。

光回線でエメラルドみたいに輝く街。
そしてニック・ドレイク。
ヴァーチャルな人々が、恋し合う季節。

この世界に限界があるって、何度も何度も思う、
そしてギターの、クリーントーンや、ディストーションがあるって、
そして僕が君の笑顔だけを、希うことって。

目の前の全ての道が、幸福なネオンで満たされていますよう。

死を、行動に移さなくちゃ。

全ての全てが、全てのために輝いていますよう。


自由詩 煙とともに Copyright 由比良 倖 2021-02-05 03:39:58
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