風理、他
道草次郎

「風理」

退屈そうに
地球儀をまわしていた
かみさまが
ふとした拍子に
ついたためいき

あたし
地図は読めないんだけど
風図は読めるの

ぼく
地理は苦手だけど
風理は好きだな

おれ
航海図なんていらないぜ
風に吹かれるままさ

風理の理が
まったくの気まぐれに
産みおとされことを
知る人はいない


「もっと堆積させろ」

暁の氷柱光らす軒先に
ジュラ紀みたいな月がいて
振り向きざまの俺に
こう云った

もっと堆積させろ
もっと堆積させろ

俺は何だか嬉しくなって
にわかに
冬の空へと駆け出した



「回答」


そうです
叫ぶ草原がまだある地球なのですから
火星のように
抽象的な花は咲かないのです
そうなのです


「絶句」

ああ…
なにも見えない
そして
舌が走っていく
残されたものに
幸いあれ
と言い残して


「空のかんさつ」

春、空は単調
夏、空は膨張
秋、空は長調
冬、空は緊張
新年、空は新調

空には
意外に愉快なところがある



「陳腐」

無限の宇宙のどこかで
無限のわたしと
無限のあなたが
話をしている
これはもう奇跡を通りこして
陳腐の領域に入っていると思う
だってほら
みんな平気な顔をしている



「万華鏡」

万華鏡で
覗いてみてごらん
却ってふざけた
ふうに見えるから

風に
吹かれてみてごらん
まずまず汗も
乾くはず


自由詩 風理、他 Copyright 道草次郎 2021-02-03 01:25:35
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