詩的認識ロンのために
ひだかたけし

  *

新年の夜が深まり
姿を持たぬ思考たち
五感の縛りから解き放たれ
星空の下で踊り出す
遠い過去へと遡行する
魂の営みの始まりだ
透明な窓辺で落ち合って
僕ら、それぞれの旅に出よう
肉を携え肉から離れ
孤独のうちに発光し
憧れ未知の永遠へ
僕ら、愉快に覚悟を決めて

  **

孤独に発光する、
散乱するイメージのなか
源頭へ遡る、
前進する時間のなか
旺盛に分け入って行く、
イメージがイメージを呼び

深海の頂きで
未知なる木霊を聴く
大雪原がうねるように
今日も夜が深まってゆき
点灯されたオレンジの明かり
心は震え、遠い過去へ接続する

溢れる光は感覚を越え
一つの形象となり像を結ぶ
レディオ、レディオ…
静まり返るこの世界

  ***

一つの光が二つに分かれ
二つが四つに、四つが八つに……
そうして僕らは生まれたんだ
この眩しい地上の光のなかへ
ばらばらに、ばらばらと、生まれたんだ

戻ることは叶わない
遡行しながら進むしかない
僕が僕らになるために
僕らが僕になるために
(前進する時間に遡行する時間
麻痺した意識を静めて醒まして
遠い記憶を掘り起こし)

ばらばらの僕とばらばらの君
僕と君との距離、無限大
けれどこの孤独な旅の果て
いつか僕らは一つの光を見る
いつか僕らは一つの光となる

一つの光が二つに分かれ
二つが四つに、四つが八つに……
そうして僕らは生まれたんだ
この眩しい地上の光のなかへ
それぞれの光を背負いながら
ばらばらに、ばらばらと、生まれたんだ

  ****

仄かに明るいこの冬日
雪は遠くで降っていて
陶然と一陽に木霊する

数千数億の銀河の渦が
降ってくるよなこの今に

艶めく若芽の燃え出づる、
感覚知覚を越えてゆく
未知なる時を紡ぎ出し

  *****

憧れ、夢、予感の
余韻の奥に輝くもの

わたしが私であって
私で在らぬもの

未知が胸奥から押し寄せる

感覚を越え
溢れ流れるこの今に

  ******

無力だ
私は徹底して無力だ

感覚から離れようとして
認識の限界に触れ
虚しく知覚映像を貪る

魂は未だ自立せず
背を正して待機する
思考の直観の領域に
鮮やかな夢を見て
意識は半ば虚脱して
己の前に立ち現れる
様々なイメージと戯れ

そうして
沈黙の前に立つ
生々しく、生々しく
沈黙に 触れる

無力だ
私は徹底して無力だ

  *******

そうしてまた
真っ白な一日が 経過する

僕は何一つ手に入れなかった
心の奥に貼り付く無限
認識の荒野に曝されたまま
謎は謎として残されて

そうしてまた
真っ白な一日が 経過する

沈黙の時に眩暈して
遠い予感に打ち震え

















自由詩 詩的認識ロンのために Copyright ひだかたけし 2021-01-19 18:57:11
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