白黒のフィラメント
嶋中すず
消えていく記憶の
映像はやがて
色あせた
一枚の写真になって
避けられない風に
彩りをながしてしまうの
くるくると
回る
地球儀の おと
重ねた手のひらの微熱
なくした手袋の相槌
街路樹のささやき
耳をすませた
あの日の
面影
きみの手は暖かいね
古い校舎と
団地に並ぶ
ありきたりな
たくさんの
窓
眺めた
そらは
どこまでも広くて
指先からこぼれる宝石たち
水たまりに沈む そら きらきらと
消えていく記憶に
おしろいを塗ってみた
避けられない風に
花びらをうかべてみた
一枚の色あせた写真
彩りは 灰になって
くるくると
回る
地球儀の おと