腕を伸ばした、指の先の距離で(ゴル投稿修正版)
高橋良幸

街中に溢れている
気だるさや
やるせなさや
無関心や
私には名付けられない誰かの表情
変わらないようにみえても
変わりつつあるのだ
忘れかけていた
足りないもの
オールドノーマルな
例えばライブハウスにあったような熱狂だけが
目の前から欠落しているようにみえた

新しい私たちは
両手を持ち上げて
ぐうっと大きく
腰や肩甲骨につらなるからだの
部分部分を
ストレッチさせていく

そうして整った準備運動の頃合いを見計らって
各々のからだに
角速度に変換可能なエネルギーをぎりっと貯め
コマのようにぐるっと回る

バランスを保つために広げた、
水平な腕の指先をピンと伸ばしたところ
そこが理想の境界線だ

風を切って揺れる
木綿や絹やサテンの先に
弧を描くいろいろな肌色の
数々の私たちが
最密に充填されていって
ぐるぐるしたそのまるの中で
◯あっ◯
とさけぶ

おおげさにならないように
確かめあう
おしくらまんじゅうのようなひびき
ぶつかって
ぶつかって、
ぶつかってしまう

どこからか歓声がきこえてきて
願望のようで
願望のような

願望のように
すれ違う
商店街の
階段の先で
踏切待ちの列で
タラップの中空で
テラス席のはずれでも
満員電車に揺られながらも

私たちは想像上で腕をぐるぐる回しているくせに
どこからかきこえてきた歓声に
ぶつかってしまいたくてしょうがない

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自由詩 腕を伸ばした、指の先の距離で(ゴル投稿修正版) Copyright 高橋良幸 2020-11-29 19:06:09
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