立会
大村 浩一

11月の今頃になって
ハムスターが死にかけている
妻が巣箱の入り口に芋を置いても
出てくる様子がない
ペットショップで買って1年半
秋から急に痩せてきて
数日前から餌を食べなくなった
廻し車で騒々しかった熱帯夜が嘘のよう
まるで別の生物になりたくて走っているようで
この冬を越せると思ったが
声をかけている妻も内心
予期している

静かな夜が過ぎていく
最期を待つだけの時間が
これから私たちに何度も来る
例えば次は母かもしれない
病院の長椅子で
残される者同士で話をしたり
腹が減ればパン位齧って
そのうちに決着が来てしまう
奇跡のような緩解を信じてはいるが
来ればやり残しは諦めるほかない
寄り添えなくてごめん
寄り添えなくてごめん、と思いながら
夜の部屋で
遠のいていくお互いの命の
距離を測っている


2020/11/28 大村浩一


自由詩 立会 Copyright 大村 浩一 2020-11-28 17:54:28
notebook Home 戻る