Mask
星 ゆり





ワンルームの視界に
日をくべる
爪先の怒号
息づかいで飯を炊く
大さじも小さじも
見間違いのないテーブルが
イマジンの頬を叩く


同じ世界を見ない遠さで
文字は「きみ」と呼ぶ
明るさに耐えかねるのは
暗みと大差ない
光のほう
照らしたものは
照らしたままで


目を開かないのに
雨はあきらかだ
「言葉」は読めますか
指図されたドアに
誰かの油がはねる
殴ったものは
殴ったままで


知らずに寒がるなよ
たずねたもののすべてに
メガネをかけてやれない指だのに
知って暑がるなよ
見えないものは
呼ぶためにあったのに
お前はうつさなくたって
たましいにもふれないでいる


マスクを着けた「もの」が
ワンルームにも満たない声で
咳き込んで答えている
たとえば
生かされていることだけは
平等だったとして


痛みで腹をかかえるまえに
爪を切る
どこまでも届かないお前が
了承なき命と、となりあえるまで
箸先を洗い流すな








自由詩 Mask Copyright 星 ゆり 2020-11-26 22:05:54
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