ドーナツは誘う
ブルース瀬戸内

ドーナツの穴といえば
不足の象徴ではなくて

ドーナツの穴といえば
宇宙の入り口でもなく

ドーナツの穴といえば
世界を洒脱に切り取る
象徴的な形でもなくて

悲しさや寂しさを吸い
喜びや幸せを誘い出し
なおも穴を開け続ける
時空の支配者顔をした
お気楽極楽スイーツの
肝となる部分なのです

客観的にも主観的にも
空しくないことこそが
とてつもなく空しくて
寂しいこともあります

穴がないことが悲しい
普通であることが辛い
そんなこともあります

穴があるということは
鮮明なコントラストで
穴がない部分があると
宣言してるみたいだし
そこを誇ってみたって
別にいいじゃないかと
僕は思っているのです
そこが美味しいのです

穴の形が様々であれば
覗ける世界も様々です

世界は形を決定せずに
覗かれるのを待ちます
どんな覗き方をしても
喜んでくれるでしょう

そんなことを考えつつ
僕は大好きな大好きな
フレンチクルーラーを
欲張って頬張って顎の
限界突破に挑むのです


自由詩 ドーナツは誘う Copyright ブルース瀬戸内 2020-11-09 08:53:32
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