幻想と歴史
道草次郎
みずうみに
釣り糸をたらすと
うつくしい皺が外縁へむかい
逡巡をひろげていく
魚のいない惑星では
玻璃でできた液体はとてもあおい
水べの図書館の閉架には
魚偏でできた文節が
しずかな添い寝をしている
意味を呷ると
一筋の空がしたたり
森が育ち
こどもたちが球状星団になる
風のきわ
見開きの神話がはためき
咳込む人の
熱は疾くいやされる
ゆくところを失くした
風の歌が
井戸の底の永遠に
こまごまと
舫いのようにゆれていた
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幻想の詩群