幻想と歴史
道草次郎

 
  
みずうみに
釣り糸をたらすと
うつくしい皺が外縁へむかい
逡巡をひろげていく

魚のいない惑星では
玻璃でできた液体はとてもあおい

水べの図書館の閉架には
魚偏でできた文節が
しずかな添い寝をしている

意味を呷ると
一筋の空がしたたり
森が育ち
こどもたちが球状星団になる

風のきわ
見開きの神話がはためき
咳込む人の
熱は疾くいやされる

ゆくところを失くした
風の歌が
井戸の底の永遠に
こまごまと
舫いのようにゆれていた








自由詩 幻想と歴史 Copyright 道草次郎 2020-10-27 19:55:11
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