名無し人
ひだかたけし

 わたし

わたしが点在している
時間軸は消去され
点と点は結ばれない

ほら、あそこにもここにもわたしがいる
永遠の花園だ
垂直にそれぞれの孔を穿ち
わたしが不断にほどけていく

点在している私
時間はもはや流れ去り
疎隔したまま秋と成る


 仕切りガラス

人が通り過ぎていく
仕切りガラスの向こうを
人が喋っている
仕切りガラスのこちらで
わたしはいない いなくなる
仕切りガラスという境界に


 門

門が開いている
永遠に憧れたまま
根無し草の
宙吊りで
名無しの者にだけ
許されて













自由詩 名無し人 Copyright ひだかたけし 2020-10-24 21:39:43
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