一本芯
もちはる

澄んだ眼の秋刀魚を
団扇で煙を飛ばしながら
七輪の炭で焼く
一文字のまま
黄金色に

皿にのる
香ばしい皮の下には
柔らかな身を支え
小骨をたくさんつけた
背骨が真横に走っている

丈夫なその骨は
冷たい海流にのり
うねうねと泳ぎ続け
名もなき一匹として
まっすぐに生き抜いた
証し

背骨に沿って箸を入れ
味わいながら食べ
箸を置くと
皿から一本芯が
「肩書ではなく
 一本通ったものが
 あなはにはありますか?」


自由詩 一本芯 Copyright もちはる 2020-09-29 20:57:46
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