またしても秋
道草次郎

初秋はつあきの床にメールの落ちるこゑ

秋めくと紫いろもほのあお

風すてて秋の彼岸の岸に付く

秋のひる裏返しのまま外仕事

空澄んで一箇の落下おともせず

つかれはて柿の紅葉もみじまとう影

鶏頭のおちつくつのに涅槃あり

通るごとコスモス揺れる堤道つつみみち

折り合えもせずにここまで糸芒いとすすき

蟷螂かまきりのかまのやわさに絡む指

野葡萄のいろとりどろと雑貨店

獲りたてといえども秋の茄子なすび

死人花しびとばな群生と聴き箸を取る

警笛にゆれて千屈菜みそはぎ停るまで

空という秋の寡黙な懐手ふところで

秋猫の力士の様な肉の附き

馬肥えてショッピングモール橋の下

小鳥来る庭の花木の二三本

団栗どんぐりの流れさまみる夢の河岸かし

すなどれば秋草混じる侘しさか

七日目の友禅菊のような恋

薄原すすきばら一望をなす空の下

桃の実とゆたかな夜の読書灯



俳句 またしても秋 Copyright 道草次郎 2020-09-22 12:57:38
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