またしても秋
道草次郎
初秋の床にメールの落ちる聲
秋めくと紫いろもほの蒼く
風すてて秋の彼岸の岸に付く
秋のひる裏返しの儘外仕事
空澄んで一箇の落下おともせず
つかれはて柿の紅葉に纏う影
鶏頭のおちつく角に涅槃あり
通るごとコスモス揺れる堤道
折り合えもせずにここまで糸芒
蟷螂のかまのやわさに絡む指
野葡萄のいろとりどろと雑貨店
獲りたてと雖も秋の褪め茄子
死人花群生と聴き箸を取る
警笛にゆれて千屈菜停るまで
空という秋の寡黙な懐手
秋猫の力士の様な肉の附き
馬肥えてショッピングモール橋の下
小鳥来る庭の花木の二三本
団栗の流れ様みる夢の河岸
漁れば秋草混じる侘しさか
七日目の友禅菊のような恋
薄原一望をなす空の下
桃の実とゆたかな夜の読書灯