7つの朝と補遺
道草次郎


第一朝「ミューズ」

詩を書き終えてからのあなたの生活を下さい。そしたらミューズはなんといいますか。


第二朝「未来」

概ねはなかなか考えないことを書くと評判です。そういうのが沢山生み出されるほどに、未来の人は気の毒でしょうか。どうなのでしょうか。


第三朝「意味」

何かとは別の何かだ、というのはそれ自体無意味ですが、そうした働きのなかにたぶん洞察が昼寝をしています。でもいくら洞察があっても意味の行方不明に心は戸惑うばかりです。


第四朝「透明色」

「ただ」生きていると「ただでなく」生きているこの二つがあるとして、その内の「ただでなく」って何ですか。自然がそんな面倒な二分化を好むならば自然は阿呆でしょうか。生きている「だけ」、です。この、「だけ」も要りません。生きている。これも無い方がいい。空。まあ、こんなところで落ち着きましょうか、じつに、黒い白色などありますまい。


第五朝「数の概念」

それまで、と、それから。どちらの学問がいいでしょう。基準は単に時間軸のみではありません。迷ったらとりあえず、「と」の学問である数学をオススメします。


第六朝「接点」

ほんものの哲学者が詩人でないなどということがあるのですか。或いはほんものの詩人が哲学者でないなどということが。


第7朝「気付き」

何万匹もの虫たちが夜の間中ずっと鳴いていました。そのあいだに一体何匹が死んだことでしょう。にもかかわらず、虫の鳴き声は虫の鳴き声のまま。あの鳴き声とは、いったい何なのでしょう。




補遺の朝「セルフィ」

蝶々がひらひら
おっと比喩で捕まえないで
鏡が嫌いなくせして精神の自撮りの
まあ
好きなこと





自由詩 7つの朝と補遺 Copyright 道草次郎 2020-09-21 05:27:03
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