〈命題ⅰ〉
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皆
日や骨格を見つけ過ぎている
そしてほぼ
肉付けに接近しては間合いをつめすぎるし
おしっこに出掛けてはそれを見失う
あるいは諸共流してしまうか
千の明け暮れに万の忘失は折重なり
遺失物の堆積として
腐海と成す
それは
なうしか
ソノモノアオキコロモヲマトイテコンジキノノニオリタツベシ…
〈命題ⅱ〉
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皆盛んに云う
透明なスナドケイのすな
透明なすなどけいのスナ
トウメイな砂時計の砂
と
かかる
形體は石灰岩質の切り立った岬に収斂せられるが至る所には烈烈なる亀裂とヒビワレが…
一匹の猿そこに立ち酸混じり雨に打たれる…
脳を包む薄膜の外側の頭蓋という陋屋の切り立ったもう一つの絶壁にも
また
もう一匹の猿
擬い…
〈命題ⅲ〉
#
闇
鋼
彫琢
億年の雷音
軍隊蟻の
跫
ひそやかに月明に映え
桐の一葉
即宇宙的表裏
顕現する紫陽花に
降り注ぐ有害線
石筍にかぜ
したたる刻の集積による氾濫と再生と
赫赫たる
歳月の
しわぶきと
軸ずれ!
生緑の、空にかかるのは
太陽太陽太陽太陽太陽太陽太陽太陽
死
生
詞
性
紫
靑
トッポん
とぽン
つつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつつ
〈命題ⅳ〉
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みな安息を欲しながら
朝な夕な
風下にたち
砂時計を手にもつのだ
それを傾けてはふところの猫の頭を撫でつけ
拍動と共に育つ空明にイザナキのようなキスを落していく
〈命題ⅴ〉
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求めに応じ得られたものの中よりやがて
巣だつ猛禽の雛
それは核酸でなく幽体でなく
さりとて
精神でもなし
それは
安息の為飛翔を志す一個の
宇宙孤児
或いは
濁り眼のあこがれ
真実とは
秘匿されつつも
河畔に於いて
既に盗みつくされた
プラスチックで出来た
墓標群だ
「2世紀分の後退」
進化の途上なんです
このキリキリ舞いはでも
それは
どちらかな
跳躍のくすみか
目隠しの断続か
はたまた
ミームの
嗽か
ダーウィンですよ
それに尽きる
19世紀が理想です
ですから
2世紀分の後退がみられます
進むほど
後退です
ぼくはSF作家で言ったら
レムかオールディスの二択です
ことに
オールディスの
短編ですね
ニューロ中心主義の
あぶくみたいなのより
ずっと
康やかです
『見せかけの生命』という美しい短編を
お読み下さい
一千光年にわたり
数限りなく残存する建造物での話です
内容は割愛するとして
「コルレヴァリュロー」
この不可解な太古の異星種族の名辞のみで大半は結構な事でしょう
ところで話は
進化と
キリキリ舞いでした
さあ
この話は繋がらないようだ
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とにかく事を荒立てては
なりません
時には
諄々と説かれるのも悪くない
ものみななべて
さにあらず
たとい
一つまみだって
深刻でない
遺跡など無い事でしょうしネ
「宇宙の言霊」
次なる反省だか反芻だかの為、宇宙由来の言質生命体を喰い続けている。たとえばクリーゼ581の事を地球を想う如く親身に哀切に希求する如くに。郷里の見慣れた山肌、その淀んだ渓流を想うようにそれを想う。川に流れるのは水(H2O)でなくても構わない。メタン(CH4)だかチタン(Ti)だか知らないが、そんなものでも適当に流れていればよろしい。想う事が観測だ。
そんな具合に喰い続けている宇宙の言霊を。その言霊は、苦くて甘くて辛くてしょっぱい。だから、地球産と変わらない。その変わらない事がすなわち妙。宇宙の言霊は、本質的に通底のもの。
つーと言ったらかーと啼く。そういうものが本物で、言語学者は失職の憂き目に遭う代わりに、古来万古不易のがくもんへと墜落できるから、却って幸せ。尤も、どうせ奴らはネオだとかポストだとかいう、ナチにも郵便受けにもならない「おでき」を拵えては掲げはするだろうな。まあ、それはいい。
とうかいだよ。倒壊、いやちがう、韜晦だ。自覚的韜晦使用者たらんとしても、それは唯のなまくらさ。見なよ、確かなものってなんだろうかって。それは、線をまっすぐに引くこと、そして、曲げる時にはその線を潔く曲げることだ。東海の、あ、ちがう、韜晦のやってることは、はじめからわざとぐにゃぐにゃの線を書いておいて、確信犯的にテーブルが揺れてましたと言うようなものだ。滅びただろう?ソフィストは。
この世には実に多くのソフィストテレスがいる。尤もソフィストテレスにすらなれぬのが大半だ。よくてソフィスケーター。大体はソフィーどまり。むかし、『ソフィーの世界』という本が流行ったりしたのも肯ける。
話は、線を引きちゃんと曲げろというのに尽きる。なんて事もないものが、なんて事なくあって、なんて事ない儘ながれていく…。どうも何処かで読んだフレーズ。でもまあいいか。独自性なんてものはない、幻想だよ。みんなおんなじ。
詩が違ってみえるのは、それはその人の口や鼻が、他の人のと違ってるってそれだけの事。そんなような始末さ。焼き直しさ。焼き直しの自覚の先に発光するのが、宇宙の言霊って事。死ぬほどつまらなくて死ぬほど魅力的だね、悉く、何もかも。では、失敬。