胡乱な夜長 他
道草次郎
「胡乱な夜長」
秋も深まり
寒くて夜眠れない
碌に考えるのも適わず
こういうのを
随伴現象説というのかと
思った
毛布をもう一枚
押し入れから出してきて
今引っ被っている
少し
あたたかくなり
考えられる
人心地がついた
随伴現象説が
今しがた排除された気がするのは
寒さで
頭も悴んでいるせいか
この
やたら便利に動く
身体とはなんだ
浮薄な哲学者は
底の抜けたバケツを
頭に
かぶったまま
夜長に
暖まりつつある
「一茶」
こうしてたまたま
おっこちて
ころんころんと転がって
かと思いきや
とまったり
また転がりながら
さりながら
露の世はさりながら
一茶のおじさん
故郷は
ぼくとおんなじ
北信濃
中二の時の
ぼくの句が
見事
一茶記念館落成の
記念句会に
入選し
その時一緒に
入選した
ブラジル人の子の
句の方が
打つものがあり
うちしおれ
トボトボ帰った
あの
夕まぐれ
忘れようにも
忘れえず
いや
ほんとのところは
さっきまで
すっかり
忘れておりました
そんなこんなで
やってきた
おたんこなすや
秋の空
「空港のある土地で」
心になにが
起きている事だろう
こうして
整骨院の駐車場で待ちながら
先っぽがほんのり紅葉したハナミズキの木や
霧雨や
色落ちした屋根を
うっそりと
見とれているその場合に
あぁ
山あいに空港があってイイネ
飛行機がみえるよ
(こどもが寝返りをしたの)
君は痩せて綺麗になったね
ぼくの事は
みないで
つかれているよ
ぶっ通しだったから
でもこれはいいわけ
ぼくは疲れやすくなった
君と会っても
こうやって削って許りいるようだ
当たり前のことなのに
それに一々皺を付けて
後ろ姿とばかり向き合っている
今日は雨模様だ
ふと視線を投げた先にあるマツバギクは
雑草に埋もれ咲く
あれは
ぼくだな