秋の爆撃(自由律俳句)
道草次郎
ごめんというがいうだけの曼珠沙華
液体のよう月日無碍ながらも初秋
薔薇の顔は神の刻限にはや棄てた
空をみてそらに対峙できずに
きづいたら何も無く泥だまり。花
どうしても。どうしようにも蓮の華
このみちのくらさはくらいかと問う月もなし
鬼に取りいる血の池の夢と朝飯何食わぬ
蟋蟀鳴かなくなり残夢
幽霊よりなま身なまなましくうらめしや
積読本枕にもならず歯でちぎる食む
貧乏ゆすりが知らず乗っ取る夜半
こうこうとつき痘痕も月
探されものの心地になり赤蜻蛉
ひかりのなかでひかるほどに黒く烈烈
池に落とさず拡がらず波紋は
事事が賽の河原の塔のいし
鯨として座礁死夢だか現だか
ヒカリゴケに観察者絶無もはや思想史
葉脈の空想か思想か判らぬ夕栄
あの虫の音に添ってそいはてて朝の芝
露となるものつゆとなりたがらず霧
歩きながら思い出しながらあるくになれ
眠いならねてみるねてみている自分はいず