ゴミ屑箱の中の本懐の澱に棲むミジンコの心臓
道草次郎

いままでもこれからもそしてこれらもみんな未詩シッピ


うそつきは


ひとりはたのしい
ふたりはうれしい
さんにんはさびしい
よにんはおいしい
うそつきはだれみんな


雑草だまり


きたない雑草だまりの
もさもさした
うへうへの真ん中らへんに
薄くてわびしい
昼顔二つ
立ち止まって見ました
小ぶりだ
色だってぼやあ

してる

白い月がみていました ツツツツツ
白い月がみていました ツツツツツ

もはや
どろんどろんの気持ちぃになり
ぼかあ
まなじりをけっし
垢抜けない土民として
ナイルに
生まれ直すことに
しやす


誠実


夜が明けなければいいなんてあなたはもう思わないだろう
あなたは今に生きている
たとえそうあることに挫折し続けても切実にそうしていくだろう

ぼくは時々たいへん落ち込んでひとりでに貝になり
ふたたび貝でなくなりまたたんなる人間になったりするけれど
ぼくは今は自分になれる何かになって死んだりしないで明日を待つことにしよう
あなたもぼくもけっきょく
おんなじだ
気にいらないかい?いやあなたはそれを気に入らないというほどにもう誠実ではない


ふんわりしたもの


あるものがある人にピタッとし
あるものは別の人にはピタッとしない
同じ人でもその時々でピタッとしたりしなかったり


ふんわりしたものたちが
霊体の中を
光速度の制限をうけつつも
はいかいする

インターネットは
みかんを入れるオレンジ色の網
それぐらい
ありふれた物になった

なるほどたしかに
光年のむこうの友達へ
ピタッを送りたければ
何万年もかかるんだ

けれども
偉い人が星の海に網の目をかけてしまうかもしれない
そうしたら
光年のむこうの友達へも
すぐにピタッ

でも
どんな偉い人が現れても永久不変なことがある
ふんわりしたものの
頼りなさだ


あるものがある人にピタッとし
あるものは別の人にはピタッとしない
同じ人でもその時々でピタッとしたりしなかったり


ニャロメ


物語を書こうかなぽ思うて
ペンをもつうが
だめじゃ
カキカキできん
歌をうたおうかなん
マイクをもつうが
あかン
声出んわい
なんにがわしにできまするや
ヒゲぬきかいな
みみそうじなや
カサブタはがしどや
わすぃに
でけるこた
あるりんかい
にゃろめ
にゃろめ
ニャロメノメ
せやぁ
赤塚不二夫先生

御本なら
読めるかもしれなぃンのず
ふるるふるりら
らりるろる
あては
ニャロメをおもぅ〜と
すごくぅ
心が
パァっとしますんでせぅ


くさりかげん


くるしいとかだめだとかしにたいとかむなしいとかかなしいとかせつないだとかひとりでずうっとぶつぶつつぶやきながらいちにがすぎましたふるいそふぁによこになってせいめいへのぼうとくじんせいへのぜつぼうししてのちおんりょうとなることそういうことばかりをいいつのりきょうというひはすぎましたここにいったいどんなすくいがありましょうかみにくいむしがじべたをはうのをみるようにこのもじのられつをみてくださればさいわいですそしてそのみにくいむしをふみにじってくださればなおのことちょうじょうであります


余地


夜の動物園にいきたい
低い潅木の奥
生々しい息をする肉食獣だけが
ぼくを浄めてくれる

ねぇ
ぼくは肉で
お前は捕食者

ここに
家庭問題の入り込む余地なんてあるかい?


無記名


世界は死んでしまったものに
名をつけない
個人的な閉鎖は
無記名のうちになされる
かなしみは
かなしまれまない
虚しいと言っても
押し黙るばかり
それが
正しいあり方であると
歴史が教えたからか
それとも
祖先の言い伝えか
世界は死んでしまったものに
忘却を与える
忘却などつまらないから
死者たちは
ときどき蘇えったりする


光明


しんくい虫の宇宙だよ
つまらないから
オゾンを食べて
排泄をならったんだ
透明などんぐりがね
空から降ってくる
おれはよ
低能なんだよ
職務遂行能ゼロ
なまくら刀で
過酸化水素を
ぶった切ってやった
そしたら
しわしわの婆さんが笑って
次の宇宙を
駄菓子屋の中から見つけてこい
なんていいやがる
おれはよ
低知能だよ
だってきょうなんて
ぶつぶつを潰して
終わったんだ
ワームホールを通ったら
内蔵になれるだぜ
ママが
そう言ってた


わたしはあなたをしまわなきゃ


わたしはあなたを
しまわなきゃ
小さな箱に封をして
なにごともなく
過ごすのさ
ある日にふっと思い出し
箱のなかみを揺らさなきゃ
まだいるかしらん
どうかしらん
そんなことのくりかえし

わたしは小鳥を
逃がさなきゃ
鳥籠という鳥籠の
色とりどりの
小鳥たち
さあ飛んでゆけ
青空へ
戻ってくるな
自由だよ
そんなことのくりかえし


ぶぁ~ん


ぼくは今ぶぁ〜んと
なっています
とっても
ぬかぬかしている
おとなになりきれやしない
いかーんよ
もう自分を甘やかしすぎて
ぼこぼこしてきてる
ああだめだよん
こんな事じゃ見つからないよ仕事ん
こんなんじゃ
ららららら~
ら ら
ばうんばうんばう〜ん
よいしょっ



てい!
ほほーい
まいったまいったまいった
どしよどしよどしよ
どすこい


まちがいあれ


まちがえてしまったあのとき
いやあのときのまちがいは
そのまえからのまちがいのひきつづきだから
まちがえてしまったのではなく
ひきつづきまちがえてしまっただ
つねにひきつづきまちがえてしまっているのだからげんしょにおいてのおおもととなるまちがいは
おおいなるまちがいとしてまちがいせかいのひかりあれならぬまちがいあれというべきか


死の陥穽


壊れた電話
壊れた電話
壊れた電話
壊れていていない電話
壊れた電話
壊れた電話
壊れた電話




自由詩 ゴミ屑箱の中の本懐の澱に棲むミジンコの心臓 Copyright 道草次郎 2020-09-10 20:53:54
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