春休みの宿題訴訟
星 ゆり



ちなんで、もしも、である前に
観察するだけのキャットファイトを
虫の温かみで、あざ笑ってみせよう
高熱のオクターブで赤ペンを溶かして
番犬をレンチン、はっかの匂いがするのだ
葉脈のふちにぶらさがる下着を
朝が焼けるまで、名づけないで
ナイトマーケットの灯りで先生、ばれるなら
ひめゆりの塔で
一緒に最後のミスタードーナツ食べようよ


病交じりの調停人、うなじが檸檬の形して
本当はみんな家に帰る気持ちでいっぱい
優しくて殺したいから、そこが心っぽくなるの
百円玉くらいの重みでまどろむから
カエルの皮膚にも保湿してあげたい
たてがみのすきま風に、火の手が増したら
理科室去って、魂を紙袋に入れる
発育不良の痛みはジャムにして
ねぇせんせい、ぜんぶたべて


校庭花壇の上空一千メートルで設問して
春の成層圏で手をつなぐ夢を見る
結び目に絡まる息で、液晶のような葉脈
ショートピースをくゆらせて
うんざりするほど十七歳にしてほしかった
手前どものかすみ草は十億年前に埋めたから
今更、春休みに水をあげてられない
だから負けたよ、安らぎはへばりついた
死ぬ前の愛だけが
外れたブラジャーにせり上がったまんま





自由詩 春休みの宿題訴訟 Copyright 星 ゆり 2020-08-19 23:21:39
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