ブルース・ブラザース、日本へゆく第二章 27
ジム・プリマス

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 車を出してからナビに従って、町中を20分もドライブすると、市鉄の駅前の高架下にあるパーキング・エリアについた。慣れた手つきで手錠付きのカバンを引っ張り出すと、エルウッドは車のドアをロックして、ポケットから小銭を出してパーキング・メーターを作動させた。
 通りを一つ隔ててレイ楽器店のショウ・ウインドウに、ギターやら電子ピアノやら、サックスやら、ラッパの類が並べられているのが見えた。店は確かに幾分、古めかしくなっていたけど、景気は悪くないようだ。ショウ・ウインドウが綺麗に磨きあげられているのを見てエルウッドはそう思った。
 エルウッドが店の入り口の両開きのドアから店のなかを覗うと、髪をトレッドにしてサングラスをかけた黒人が、奥のブースで、ヘッドホンをして、指を鳴らしながら、リズムをとっているのが見えた。あれがレイの甥に違いない。
 エルウッドがドアから店の中に入ると間髪を入れずに「誰だい?」と声がした。エルウッドが反射的に声がした方を見ると、奥のブースの黒人がすでに頭からヘッドホンを外してこちらを見ていた。目が見えないと聞いていたのに、ヘッドホンをしていて、何も聞こえなかったはずなのに、どうして自分がここにいることが分かったのだろう。
「ああ、初めまして。エルウッド・ブルースだ。よろしく。」エルウッドがそう答えると、奥にいた黒人はしっかりした足取りで奥のブースから、出できた。まるで目が見えてるみたいに。
 奥のブースはレイのいたころとは違い、すっかりミキサー室のようにスタジオ機器やスピーカーが立ち並び。こじんまりとはしているものの、本格的なスタジオ然としていた。反対側のブースの奥にはLPレコードが所狭しと、並べられている。


散文(批評随筆小説等) ブルース・ブラザース、日本へゆく第二章 27 Copyright ジム・プリマス 2020-08-18 14:14:35
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