べじたぶる短歌
道草次郎
にくしみは越えねばならぬインゲンの蔕取りながら黄昏れるキッチン
人参の頭を九谷へ救いだし霧吹きかけて待つ朝焼け
獲れたての茄子とならんでふるい茄子さもうらめしげに黒光りする
もみしだく塩漬けきゅうり腕まくりして教えては朱鷺となる嫁
暗かった卯月に植えた馬鈴薯の名はめでたくもインカのめざめ
味のないスイカのような毎日をしゃりしゃりと食みだらだらと寝ろ
ピーマンを輪切りにしてもそれはまたチガウンジャナイ?と言いたげな妻
パプリカの赤と黄色がふたりして座っていれば館は静謐
土付きの牛蒡の土を洗うとき手のひらに地の青空をみる
かき分けて森に暮らした小人すら途絶えて久しい茹でシロッコリー