道草次郎

知らない場所で雑巾をカラカラになるまで絞っていたら、死んだ父親が生き返っていてもう一度同じ病気になっていた。ぼくは中学生で学校に行けていた。好きだった同級生は大人の女になっていて、知らない男と結婚すると言った。どこかで、椿の花がぼとりと落ちて、ラジオから『いとしのエリー』が流れてきた。すると、ぼくはほんの子供になって、近所の原っぱのシロツメクサの絨毯の上で遊んでいた。お祖母さんが呼びに来た。大人になったぼくはお祖母さんとならんで歩いた。「キャッチボールしようよ」ぼくが言うと、お祖母さんは父親になって、父親はおじさんが来てるよと言った。ぼくはなんだかすごく不満で猫に石を投げた。すぐに後悔した、青リンゴでも投げればよかったと。中学生のぼくはラブレターを書いていた。引き出しをあけると、小さな鍵があった。その鍵でもう一つの引き出しをあけると、顔の部分だけが切り抜かれた同級生の女の子の写真が入っていた。小学六年生のぼくは、精通を経験した。会社から帰ってきた父親がぼくにどうしたんだと訊く。ぼくは適当に誤魔化してトイレへと駆けた。クジラになったぼくは、もう1匹のクジラのガールフレンドと一緒に夜の海を泳いでいた。そこが太平洋の真ん中だということはなぜか分かっていた。水っぽい不安を下半身に感じたぼくは夢の中で目覚めると、今度こそはと希い、もう一度奈落へと落ちていった。







自由詩Copyright 道草次郎 2020-08-07 09:14:22
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