蕎麦殻の枕
TAT
春はあけぼの
夏は夜
と謳った人が昔居るけれど
確かに
そうやって
自分の好きなものを
実際に
真剣に
数える事は
人生を生き抜いてゆく為に
とても重要な事だと思う
例えそれが主観まみれでも
稚拙で取るに足らなくても
ダサい昭和懐古でも
人は皆
自分の人生一個しか
生きれないのだから
自分の運転席から観れる風景しか
生涯観れないんだし
さ
夏は夜
向日葵は太陽に焼かれて
ぼってりと
巨乳のように腐りかけていて
僕らは
ガシガシと
音を立てながら
フェンスによじ登って
立入禁止エリアに忍び込む
セックス
岩牡蠣
花火
素麺
男はビビアン
男は黙って
ビビアン・ウエストウッド
か
アンダーカバー
秋は夕暮れ
塾の帰りが良い
家では秋刀魚が焼けていて
ススキがササラサラと
音を流していて
ドウダンツツジが
赤く赤く
明日からは文化祭が始まる
そんな秋がいい
検索エンジンはGoogle
Googleのシークレットモードに限る
私は私に関係のない事柄は
何も
知りたくはない
既に時代は
無知で居られる自分を買う時代に
突入してるんでげすよオヤビン
冬も勤めて
基本的に金が無いから
クリスマスも正月もシフトまみれで
日付をまたいで働いて
「なんで今年も貴様と過ごさねばならんのか」と嘯いたり
故郷に帰る事に決めた戦友を送ったり
春から始まる新しい生活に恐れおののく大学生を脅かしたり
するのもまあまあ好きだ
雪が降り積もり
土とコンクリートの境目の地面の上
赤と黒に近いオレンジ色の
卑猥な果実が
轍や
靴跡に
踏み殺されていて
凍てついた寒い空に
果肉を晒していて
それは冬の柿の木だ
それは古い古い樹だ
春は好きくないんでパスで
別れとか
入学とか
新しい場が始まって
一斉に始まる
値踏み合戦とか
マウント取り合戦とか
疲れるから嫌いなんよな
ただ
ホタルイカと
タラの芽の天ぷらは
美味しいから
絶対に毎年食べる
総じて
四季や人生を通して
最も素晴らしい事は
生きていて
笑っている事だ
自由詩
蕎麦殻の枕
Copyright
TAT
2020-07-26 16:18:38