春の輪廻
大覚アキラ

春の澱んだ水面には
櫻の花弁が群がつてゐて
腐爛した鮒の屍骸が
薄桃色の化粧を施した
遊郭のをんなのやうに
恥ぢらひながら
ゆつくりと浮き沈みしてゐる
大きな亀がその鮒を喰ふ
喰はれるたびに鮒の屍骸は
ぞぶりと身悶えし
亀の嘴を染める櫻の花弁が
口紅のやうに見えた

さうやつて
春は逝くのだらう


自由詩 春の輪廻 Copyright 大覚アキラ 2005-04-13 01:18:24
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