グラスのなかの暗い液体
佐々宝砂
ラベルを剥がしたビデオテープ
広げたままのけばけばしくて薄っぺらな雑誌
勘定書や生ゴミ 積ん読の本の山
段ボールの箱からこぼれた新聞紙
その陰から
ひょっこりと覗いている
幻影の少女
首の傷口から糸のように垂れる血
恐怖に彩られた見開いた目が
いかに美しいとしても
それを欲してはならない
拒まれた 一匹のいきものが
抑えられた ひとつの感情が
グラスのなかの暗い液体を嘗める
自由詩
グラスのなかの暗い液体
Copyright
佐々宝砂
2005-04-12 05:14:46