合掌
アマメ庵

走る
男、三十路を過ぎると、ふとした時に体力の衰えを感じるようになった
健康のため、走る
週に1度、或いは2度、できることなら3度
自宅から少し、川を渡り、対岸を回って、次の橋から戻ってくる
約5kmのコースを30ほどで走る

ゴールは自宅近くのお寺だ
大きくは無いが、きれいに手入れされたお寺
山門で一礼して、24ないし26歩ゆっくり歩いて本堂下に立つ
また一礼
軽く合掌し黙祷する

お経も作法も知らない
そんなことはどうでも良い
走って来た身体の鼓動は早い
走っている最中に増して汗が噴き出す
合掌のまま、深呼吸する
鼓動が少しずつ収まっていく
雀や四十雀の声がよく聞こえる
風が気持ち良い
直立したはずが、わからなくなってくる
自分が真っ直ぐ立っているのか、傾いて来ているのか
本堂に正対しているのか、そっぽを向いているのか
閉じた目蓋の裏で、景色が大きく歪む
風が気持ち良い

目を開き、一礼
玉砂利が眩しい
一皮剥けたように爽快だ


自由詩 合掌 Copyright アマメ庵 2020-04-13 21:37:49
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