波打際の二人
カンチェルスキス






 堤防の途切れたところ
 銀の自転車が一台
 サドルの向こうには
 丸石でできた人工海岸
 波打際に座った二人
 


 明かりを落とした観覧車
 駐車場のオレンジの光
 4WDのタイヤの陰で黒猫が一匹
 黒く横たわる海には
 風とわからないだけの風



 コンクリートにまっすぐ並んだベンチの列
 青白いだけの照明
 ゴミ箱にあふれたスターバックスの紙コップ
 巨大クレーンの赤いランプ
 救急車の音
 白人男女のジョギング姿



 遠くからトランペット奏者の形にならない音
 空に向かう車の音
 所在わからぬ菜の花の匂いと
 青い松葉の匂い
 芝生に落ちた濃い木の影は分身



 波打際の二人
 振り返ることはない
 寄せて返す波と戯れて
 小石がころころ鳴る
 普段はよくしゃべる二人
 耳を澄まして聞いている。
 





自由詩 波打際の二人 Copyright カンチェルスキス 2005-04-11 16:57:21
notebook Home 戻る