冬のプラネタリウム
丘白月

冬のプラネタリウムが
初めてのデートだったのよ
パパはずっと小さなころから
星が好きだったわ

ママが星に詳しいのは
パパのせいなのね

プラネタリウムって
どんなところなの
私も行ってみたいな

そうね今度行ってみようか
来週の日曜日がちょうど
初めてのデートの日だったわ

冬の星座が
記憶の中で回りだす
肩が触れるほど
狭い椅子に二人

暗闇に宇宙が浮かぶ
あの時二人の心は
どこにあったのだろう

星のような迷いのない
天井を見つめる目に
星座が映っては消える

あやとりのように
糸で結ばれた星座が
やがて赤い糸になってゆく

海が見える丘の上に
プラネタリウムはあった

夏になれば毎晩のように
ハマナスの妖精が
屋上まで飛んできて
望遠鏡を覗こうとする

遠い遥か昔に
花の妖精になるその前まで
前世を探そうとする

冬は椿の妖精が
赤い花びらで
寂しそうな白い壁に
絵を描く

雪が降る日曜日に
二人の親子が
三十年前と同じ席に座る

ここにパパがいたのよ
今日はどっちに
座っているかな

愛した人は今はいない
帰りに花を買いましょうね
パパの好きなお花でしょ

冬の星座が今日もまた変わらず
ゆっくりと語りはじめる
アルテミスとオリオンの悲劇

月の女神が今夜
オリオンに逢いにいく

見上げる親子の手が
そっと握られ
ありがとう 
そう二人にだけ聞こえた

今夜は星を見ようか
パパの一番大きな望遠鏡で
うん パパも見えるかな


自由詩 冬のプラネタリウム Copyright 丘白月 2020-03-06 22:16:58
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