セントポーリアの妖精
丘白月

長く学校を休んでいる
小さな女の子に
セントポーリアが届いた

白桃色と深い青
部屋の空気が
嬉しそうに動く

ベルベットが張られた
バスケットから
葉が溢れ花が揺れた

青い帽子の妖精が
ゆっくりと天井まで飛んだ
桃色の長い髪の妖精が
そっとベッドを見つめる

眠っている枕元に
双子の妖精は降り立ち
早く元気になりますようにと
目を閉じて祈る

妖精は知っている
この花を届けた少年の
花を選ぶ恥ずかしそうな笑顔を
遠い所から花を運んできた愛を

ずっと妖精は見てきたから
願いを知っているから
魔法を二つ持って来た

この子は雪のようだねと
双子の妖精がつぶやく

綿のように生まれて
周りを明るくしながら
時間を積み重ねているよ

凍って溶けて
消えてしまうには
あまりにも早いとつぶやく

命の継ぎ足しを
この子にあげるのね
この子は愛を知ってるからね

双子の妖精が
自分の羽根を半分づつ抜いた
これで大丈夫だよ

一組の羽根が
女の子の胸に溶けてゆく
セントポーリアの香りが溶ける

双子の妖精は一つに
生まれ変わって飛んでいった
美しい羽根を神から頂いて

妖精には春の景色が見えた
セントポーリアを届けた子と
嬉しそうに桜を見ている様子が



自由詩 セントポーリアの妖精 Copyright 丘白月 2020-03-06 22:15:02
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