濡れタオル屋
たもつ

 
 
水に濡れたまま
雨にうたれている
妻が傘の下からタオルをくれる
いくら拭いても
濡れタオルだけが増えていく
妻は可愛い人
こんな時でも傘には入れてくれない
濡れタオル屋でもやろうかな
と言うと
それじゃあ私はタオル渡し係
と答えるから尚更可愛い
いつまでたっても
雨にうたれるのは下手糞なのに
濡れタオルを作るのは
上手になっていく
それでも可愛い妻は傘に入れてくれない
柄しかない傘に入れても
僕が傷つくだけだと知っているから
また一枚
妻が濡れタオルを差し出す
水に濡れながら涙をこらえている妻は
ほんのりと色気もある
 
 


自由詩 濡れタオル屋 Copyright たもつ 2020-02-21 19:38:29
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