Gastronomy club 1
AB(なかほど)
1
イカはものすごいとこまでも使えるらしい
と制服の君が言う
イカのものすごいとこというのが
君にとってどこまですごいことなのか
よくよく聞けば
イカの耳も使うとか
2
ビールと合うのかな
と言ってるそばから
くさい くさい
といいながら
彼女はくさやを千切って
笑って食べた
3
まだ緑の生い茂った頃につく花梨の実は、毎
年のように手が届かないところについていて。
酒に漬けると美味しくなるとか、蜂蜜を加え
たら喉の薬になるとか、はす向かいのKさん
は毎年言う。けれど、その花梨の実は家のも
のではなくて、荒れ放題の隣の敷地から家の
4
まだ一度も藻を食んだことのない稚魚でなければ
お腹の色が黒ずんでしまっては
いいスクガラスができない
日頃公務員をしている男でさえも
何日も前から目の細かいスク網作りをしながら
朔を待つ
5
向日葵畑で踊ることを夢見てた娘は
どこに行ってしまったんでしょう
と鼻歌まじりに
糠床をこねくりまわす
今年の冬からは
かぶらずしも漬けてみようかしら
6
ぽてとちっぷすはおいしかったね
おらっちががっこういってるころなんか
あんなもんなかったけど
はたけのだいこんとかぬいて
はしってにげながらたべたよ
こーらもおいしいね
7
あかん
なんでこないな汁の味で
涙でよんねん
あかんやろ
こら
あかんやろ
8
糸瓜料理は
ちょっと手間をかけると
ポチャポチャと
自らの汁にスポンジのように
漂いだす
美味いから食べてみろ
9
当たった顔の 谷やんを
誰も見たこと ないけれど
負けても笑う 谷やんの
その顔を見たくて ホルモン屋
ちょいとそこまで 行く先は
桜公園 ホルモン屋
10
いつものとおり
だと
泣いてしまうので
美味しいお菓子の作り方
で
カレーを作る
11
今年の鮎う、ちっこおてえ、
まだ悔しいふりをしながら言っている
のを聞き流しながら
ああ、あじずし、なつかしい
と僕はたぶん毎年言っている
この山椒の葉、やっぱり辛いって
12
どうも合点がいかねえ
どうも合点が
このメニュウ
先生の部屋の座卓に置いてあった
原稿用紙に書いてあったことと
そっくりだ