滅んでゆく或る国についての叙事詩
TAT









その国は最期まで
明日があるかのように
変わりなく時を刻んでいた
つまり



村長がヘイトを買い
アルビンとニコラスは緑色
老人は戦術論を熱弁し
神父は付和雷同だが
シスターは自論を曲げない
木こりトーマスは粛々と判定を落とし
ならず者はコアズレ
少年は賢く
少女は聡く
羊飼いはロジカルで
村娘パメラは豪腕
パン屋はパンを焼かないし
宿屋の女将は歯に衣を着せない
ヨアヒムは今日もニートしていた
ヤコブは質問に答えず
エルナは不思議発言を連発し
司書が票を集め
負傷兵が競り負けて回避していた




けれどもこの国にはもう
新しい村は建たない




27才の弁護士が霊能者を騙り
18才の風俗嬢がカミングアウトした
14才の京都の中学生が咬まれて
28才の歯科衛生士が吊られた夜
19才の予備校生は白く輝いていた
42才の中学校教師は黒く塗られ
30才の俳優はスケープゴートにされ
29才の証券マンが赤い声で囁いて
33才のSEが手順を踏みながら
25才の大学院生が決定票を投じた
20才のトリマーの墓石はガタゴト揺れ
31才のコンビニオーナーはベグられて
22才の足場屋がGJを叩き出した





そのようにして
実に15年もの間
この国には
毎日毎日
多くの村が建った








G国に夜明けはもう来ないけれど

夜明けを目指すのをやめた訳じゃない









夜明けまであと1秒の
その1秒を二つに分けて
それをまた二つに分けて
分けて
分けて
分けて
どこまでも
いつまでも


夜明けを目指し続ける
永遠に手を伸ばし続ける
希望を追い続ける
光のゾーンに入ったんだよ












































【ありがとう 人狼BBS】





































自由詩 滅んでゆく或る国についての叙事詩 Copyright TAT 2020-02-01 16:13:59
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