月の薬
丘白月


平安の黄昏に鐘がなる
カラスの恋人は
ひとつの影になる
朱色の柱に漆喰の鳳凰
牛車の轍のあいだに小さな花
明日は踏まれてしまうだろうか
子供たちは雀のように
無邪気に巣に帰る
ひとつまたひとつ小さな家に
夕日の忘れ物のような
ロウソクの明かりが薄暗く
でも温かく灯される
ポツポツと雨が落ちてくる
轍に水をためていく
枯れそうな花のために
月の薬をすこしまぜながら



自由詩 月の薬 Copyright 丘白月 2020-01-18 22:49:14
notebook Home