塔とは呼べない
Seia

サイコロにもう一面加えた
物体を
積み上げたその
屋上に立っている
風は適度に
産毛を撫でる

乾いたシャツが余計で
もっと濡れていたらよかったのにと
ドライアイ
瞬きの度
次々と積み上がる物体
(完成)
と言われた気がした
屋上に
人々が降り立つ度に

それぞれに
違う方角を向いていて
わたしも含めて
首は動かせないみたいだ
ローディング
正面を向き合ったひと
回転する矢印が顔にかかって
表情は読み取れない
あちらからも
そう見えてるのだろうか

囚人のようだった
わたしたちは
(完成)
してから
どれぐらいのときがたったのか
わからないまま
立ったりしゃがんだりしている
そうしている間も
動かせない首
鉢植えの
チューリップの色が思い出せない
蕾のまま
春はもう過ぎた

あまりに細い

物体の上で
咲けないままの身体たちだった



自由詩 塔とは呼べない Copyright Seia 2020-01-18 20:53:55
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