廃棄物になりたくないのなら
ホロウ・シカエルボク


回転する序曲の韻律はすべて逆さまだ、首を傾げたって上手く読み取ることは出来ない、そんなときは頭で理解しようとしないことだ、頭で理解すれば理屈っぽくなるだけだ、イメージを読み取るのさ、まんざら素人でもないだろうに…なんて、そんな話してもしかたないよな、すべては描かれてしまった、描き直しは効かないんだろう?分かってるさ、そんなやつは腐るほど居る、最新型のロックンロールを奏でるのは決して新しい奏者じゃない、それはいつだって最初に手を付けた連中の仕業なのさ…みんな分かってるくせに知らないふりをしてやがる、それを認めちまったら自分のやってることになんの意味もなくなると思っているのさ、つまり―いつだって模倣に過ぎない連中にとっては、っていう話だけど…つまりさ、スタイルとしてじゃない、スタンスとか興奮とか、そんな成分で理解しているから先へ進められるのさ、続けていく中で得た知識や技術で、何も知らなかったころの自分に戻るにはどうすればいいのかって考え続けるんだ、そうすれば魂は何度でも再生出来る、慣れて、仕上げる事ばかり考えるようになっちまったら、そいつはもうお終いさ、何年やろうともうなにも生み出せはしない…俺は理論を構築しない、俺はプロセスを持たない、俺は軌道を修正しようとしない、これをただの自慢話だと思うなら思うがいい、だけど、本気でやってる連中はみんな理解してくれてるよ…それをやり続けることがどんなに困難なのかってことをね―俺は楽をしようと思わない、楽をすると楽しみはなくなる、難しい方がやりがいがある…それはすべてのことに言えるんじゃないのかな?簡単に、簡単に片づけることは一見カッコいいよ、だけど、それは一張羅を着て歩いてるだけのことなんだよな、どう見せるのかってだけのことで、中身はたいしてありゃしないんだ―思考は火薬だ、言葉は弾丸で、文章はマガジンだ、指先はトリガーを引くのさ…バーンってね―「ガラスの動物園」って芝居、観たことあるか?詩人はマシンガンを撃つものさ、酩酊してね、激しくね―幸せになるために書いたりなんかしない、美しい世界を願って書いたりなんかしない、ただただ激しく吐き出すんだ、自分を蝕もうとしている人生というやつを、運命を…アナログだって思うかい?でもそういうもんだぜ、人間なんか所詮骨と肉とポンプの詰め合わせだ、ぼんやり生きればぼんやり死ぬだけさ、妙な啓発本に乗せられて、悩める自分を捨てようとするなよ、悩める自分を諦めるな、そいつとつきあわなけりゃそのうちどこにも行けなくなって肥え太るだけだぜ、真実を知るには真実を決めないことだ、俺はいつだってそう書いているだろう、そんなもの人間に決められるわけがないんだ、ただ、そう、でも、そういうものがあるって分かっていれば、自分の進むべき方向だって見えてくるというものさ、俺はまだそれを見失っていない、もう見失いようがない、手を付けたときからそのことは分かっていた、だけど始めはなにもかも朧気だったんだ…たったひとつを信じるために、その他のすべてのものを信じない方が良い、自分自身を守り続けたいならね、信じるに値するものなど本当はそんなにないんだ、余計なしがらみに縛られて居心地の悪い真実のなかで蹲るべきじゃない、その先は必ず行き止まりだよ、消化不良を起こして、自家中毒になって、ベッドの上でやせ細るのがオチさ、手を上げな、上げれば振り下ろすしかない―口先だけで生きようとするな、言葉は魂のためにある、それが分からないやつらのことなど相手にしなくていい、捨てておけばいい、こんなものに手を付けたなら、パーティーの相手なんか探すことは出来ないと覚悟しておくことだね―ストイックだって?そんなことないよ、そんな人生って結構楽しいものだぜ、いつだって自分が興味の中心なんだ、自分の中に竜巻を感じて、それを上手く逃がしてやるんだ、やめられなくなるぜ、そいつはいつだって上手く巻き上がってくれる、そうすると俺は、少しは気持ちよく眠ることが出来るのさ―夢の中身までは保証しないけどね…


自由詩 廃棄物になりたくないのなら Copyright ホロウ・シカエルボク 2020-01-05 21:49:18
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