僕は恋することすらできる
竜門勇気

僕は彼女が好きだ
なんにだってひたむきに
やってる姿を見てたよ
ひたむきさが役に立たないときも

笑うとすごく可愛くて
何かを我慢してつらそうな時
僕はこんな事が起きるなら
世界に価値なんてないと思った

怒ってるときも
とてもきれいだった
一体どうしたら君は笑う?
世界は君が動くたび
甘く輝く光になる
まるで眠る寸前に広がる
想像の場所にいるようで
抗うことすら忘れる

彼女は歩く
彼女の世界と
僕は歩く
彼女とその世界がいく後ろを
うつむいたまま

朝焼けのわけまえ
靴底に影がうっすら見えて
視界の闇は消えない傷になる
彼女はいつもよりゆっくり
この坂道を下っていく
僕は忘れ物を思い出したふりをして
登っていく、この坂道を
ポケットの中のタバコを握りしめて
ゆっくり、ゆっくり登っていく

彼女は歩く
彼女の世界と
背を向けたまま一度だけ
僕は立ち止まり
白い息を吐いて
それがまっすぐ空に登っていくように祈っている

なんて寒い日だろう
なんて冷え込む朝だ
こんな日には温かいコーヒーを飲まなきゃ
まともじゃいられない
とてもじゃないが
まともじゃいられない
僕は祈ることすらできる
僕は恋することすらできる




自由詩 僕は恋することすらできる Copyright 竜門勇気 2020-01-04 22:00:59
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