消去された世界のこと、あるいはすべてイメージの産物
ねことら





私の話だ、私は当時、常に空腹で、色のない箱のような街と、その箱の外縁をかじり、
ここから周囲何メートルの、そうした環境で暮らして、暮らした、
ビニールの保護膜、ノートに名前が書けない、だれにも会うこともない、
底をあるく影のような堆積、ひからびて、おしなべた、記号で呼ばれるということ、
複数形の一人称をひろうように、霧、そして干渉と鑑賞、
オートマティックな感情の仕組み、
どうしたって叫びはくぐもるから、わたしはどうやら神様じゃない、
私のことを記録する、いつだって一人で、一人だ、


歳月の回収と、捨てていく身体の部分を想う、
私は無自覚に意識的で、心臓はうごかすし息だって吸っていた、
感光したモノクロ写真のような、人混みは黙っていて冷たい、
冷たかった、淡い泥の疲れのように、


生きることも死ぬことも、どのように永続的な瞬間で、
私は手遊びのように、もう少しだけ針を手折る真似事をする




記録係の記録をしたい、私の話だ、
何度もリピートするけれど、最初から私の話しかしていない







自由詩 消去された世界のこと、あるいはすべてイメージの産物 Copyright ねことら 2019-11-30 11:47:41
notebook Home 戻る  過去 未来