私のイルカ
やまうちあつし

私はいる
たくさんのイルカを
折るために
机の引き出しから
取り出したイルカをへし折り
そのかすかな鳴き声で
たくさん欲情するために
月に置かれたままの
ピアノを弾くことはないだろう
その音色に焦がれて
またもやイルカを折るだろう
けれども誰が
実際にさわれるというのか
届かないということは
届いていると
いうことでないのか
誰でもないものよ
もうなにも
答えなくていい
泣かない人も
笑わない人も
その指先に
冥王星を宿している


自由詩 私のイルカ Copyright やまうちあつし 2019-11-01 14:34:46
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