俊足アリスと簡単な難問
卯月とわ子

跳ねた足音が聞こえる
あの子が走っているんだ
自分の背丈以上に伸びた草っぱらを
毎日同じ時間

雑草だらけの道とも呼べない道は
いつの間にか踏み慣らされて
立派な道になっていた

その道をたどっていく先には
あの子が居るんだろう
まだまだ足りないと
走り続けるあの子が

何も無い場所に道を作るのがあの子の才能で
その後に続く者たちを受け入れるのがわたしの役目
二番煎じとか言っちゃいけないよ
もっと大切にしなきゃいけないものなんだから

俊足のあの子に追いつく者は現れるんだろうか?
いつかあの子が老いた時に懐かしむ者は居るのだろうけれど
今のあの子より速く走る者は出てくるだろうか?
いつもいつもわたしは考えながら同じ答えを出す

歴史は繰り返される
歴史は塗り替えられる
いつかあの子が過去になる時にはわたしは居ないだろうけれど
その未来に立ち会わなくても答えは分かってる


自由詩 俊足アリスと簡単な難問 Copyright 卯月とわ子 2019-10-26 18:24:48
notebook Home 戻る  過去 未来