リンゴと残響
カマキリ



夜が胸に叩きつけられていく


まだくすぶっていたものが
無数の靴音にまぎれて
いつか悲鳴を上げそうな
古い洗濯機に放り込まれる

長い長い妥協の列に並んで
気が遠くなりそうになっていたのに
今は似合わない服と理論を着て
後悔に深々と腰を掛けている

各駅停車のドアが開くたびに
思い出が見切りをつけて
次の駅でもっときれいに待ち構えている

コインを入れる音がする
ぼくはこの平べったい椅子から立ち上がれない

夜が胸に叩きつけられていく





自由詩 リンゴと残響 Copyright カマキリ 2019-10-15 21:51:36
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