不在

誰も居ない部屋へ帰る

玄関の消し忘れた電気に
君の存在を期待してしまう

小さいスーパーの買い物袋を
よいしょ、という感じで
大きすぎるテーブルに置く

一息ついたその時
 「わたしはいないよ」
と、確かに君の声が聞こえてきて

寝室へ
窓を開けベランダ
重い扉を開けクローゼット
布団を持ち上げ大きなベッドの中
どこを探しても
君は居なくて

キッチンへ戻ろうとする時
 「わたしはいないよ」
再び、確かに君の声が聞こえてきて

キッチンへ
体を屈めてテーブルの下
君の好きなお菓子の冷えた冷蔵庫
もう二年ほど触らなくなっていた排水口
どこを探しても
君は居なくて

あぁだから「いない」って言ってるんだね
居ないんだから見つかりっこないよね


自由詩 不在 Copyright  2005-04-04 13:02:34
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