カンジョウ絶対防衛線 外回り/即興ゴルコンダ(仮)投稿
こうだたけみ

僕の好きな水族園が河童の水槽を設置した。誰もが知っているのにまだ誰も飼育したことがない生き物の目撃情報を募っては果敢に採集を試みる。キュウリを握る飼育員。キュウリを仕掛ける飼育員。キュウリを齧る飼育員。輝かしい攻防戦の記録写真の数々。僕もキュウリが食べたくなるけれどもちろんバッグには入っていない。ジャケットを脱いでネクタイを緩めて水のぬるさを想うだけだ。あんなに泳ぎのうまい河童でさえ川に流されることもあるのだから、ここで僕が溺れているのは当然としか言いようがない。藁へすがりたい。一件も契約が取れない。戦線は異状あり。もう僕では衛り切れません。いっそ河童になれたらいいのに。この厚いガラスの向こう側で。

※参考:葛西臨海水族園企画展示「河童を飼ウの法」


自由詩 カンジョウ絶対防衛線 外回り/即興ゴルコンダ(仮)投稿 Copyright こうだたけみ 2019-09-11 20:37:25
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